本稿では、国や地方自治体などの行政のパートナーとして、社会資本整備における企画、調査・計画、設計などの役割を担っている「建設コンサルタント」という立場から、これからの社会資本整備について考えてみたいと思います。
社会資本とは私たちが生活を営み、産業活動を行うのに必要不可欠な道路、鉄道、橋、ダム、河川、砂防、上下水道、公園・緑地などの基盤施設を指します。行政が中心となり、公共事業として整備しています。
2011年3月の東日本大震災や昨年8月の広島での土石流災害では、多くの尊い命が奪われました。自然の脅威を思い知らされるとともに、わが国が自然災害に対して脆弱な国土であることを露呈しました。
わが国は激甚化する気象災害や切迫する首都直下型地震、南海トラフ巨大地震に備えなければいけません。ですが、橋やトンネルなど社会資本の老朽化に加え、人口減少や少子高齢化に伴う地方の疲弊といった危機にも直面しています。今こそ安全・安心で豊かな社会づくりのための社会資本整備を計画的に進める必要があります。
ただ、1997年度当初予算で9兆7千億円だった公共事業費は、厳しい財政状況の中で2012年度には、4兆6千億円まで減少しました。安倍政権となった13年度に5兆3千億円と増加に転じましたが、その後は横ばいで推移しています。今後は、前述した社会資本整備を計画的に進めるための公共事業費の継続的確保とともに、少子高齢化社会が進展する中での建設産業における担い手確保への取り組みが急務です。